ソーシャルアプリ開発の5つの工夫

ソーシャルアプリはサービスイン時に膨大なトラフィックが来るという事は度々伺っており、ホスティング会社によると「イチオシ」欄に載ったアプリが数分で落ちたという事もあったそうです。

なかには100台近いサーバーで運用しているサービスもあるようで、そのコストははかり知れません。
なので今回弊社も負荷対策には慎重になっていて、システム開発にはかなり工夫を行いました。

【1】フレームワークを使わない
弊社では標準でcakePHPを採用しているのですが、やはり負荷に対する懸念が強く、今回は保守性の低下を覚悟で1から自前で構築しました。本当は全部静的に作りたい位の意気込みでしたが、セキュリティの都合上簡単なテンプレートエンジンを作り、必ずOAuthのチェックや、文字コード変換、絵文字変換、メンテナンス時間管理は行うようにしました。


【2】できる限りDBを使わずキャッシュ化
管理画面上はDBで管理し、ユーザー画面ではserializeしたデータを扱う事を徹底しました。
なのでそれをwebサーバー間で容易に同期をとるrsyncするシェルを構築。
さらに今回、初の試みでかなり不安な点が、ログの管理等のほとんどをファイルで管理するようにしました。DBを使うよりはコストが少ないだろうという判断ですが、実際どこで問題が発生するのか、未知数な試みです。この結果についてはリリース後に記述します。

【3】定時メンテナンス
毎日定時にメンテナンス時間を設けて、その時間に一気にバックアップや集計、更新作業を行うようにしました。

【4】コールドスタンバイのサーバを複数台用意
リリース後の急激なトラフィックの増減に対応できるように、コールドスタンバイのサーバを常に待機させるようにしました。

【5】動的フラッシュの生成について
ハコニワやホシツクのように、複雑なswfを生成するというパターンは実際に今回の企画では無く、会話シーンのニックネームの文字列置換を行うというものでした。
これに当たって、当初はswfmillを使った生成しておりましたが、処理コストの問題で不採用。
ユーザ別にSWFを生成するパターンも検討しましたが、全体サイズの肥大化への不安と、更新時のハンドリングの難しさ、保守性の問題から取り入れませんでした。
結論として、swfを直接置換して出力する方法を取り入れましたが、これを実装するに苦労した点として、単純に文字列を置換して出力しただけでは、そのバイト数が異なる場合、SWF内のヘッダ情報があわずエラーになってしまうという事。
本来、再度ヘッダ情報を再構築して出力する必要があるのですが、なかなかこの処理が実装できず、最終的には、置換前の文字列と置換後の文字列のバイト数を無理やりあわせて、swf内で表示上の調整をさせるというトリッキーな方法で克服しました。

その他ロードバランサーを入れたり、eacceleratorを導入したりと、細々と工夫は行っておりますが、経験上DBとのやりとりが一番ボトムネックになりやすい為、その点を重点的に対策を行い、【2】が上手く動作すれば、かなりのコストパフォーマンスを発揮してくれるのではないかと睨んでいます。

ソーシャルアプリ内の『美少女ゲーム』の位置付け

前述しましたが、弊社が参入予定のアプリは『美少女ゲーム』で、去年より運用しているキャリア公式サイトの移植版です。

もともと弊社が美少女ゲームをはじめた理由は、昨年ボルテージが火付け役となった「乙女ゲーム」が携帯で大流行し、企業が次々と参入している中、一方男性をターゲットとしたシミュレーションゲームが全くなかった為、ニッチな潜在マーケットと読み参入を決めたわけですが、読みは辺り今や主力コンテンツとなりました。

モバゲーアプリに参入する事を決めた当初は、シナリオの移植のみで、読み切りコンテンツとして「前課金」を行い、弊社が多数かかえるシミュレーションサイトを一気にリリースするつもりでしたが、研究するにつれて「そんなに甘くない」事を悟り、ソーシャルアプリとして1から作り直す方向に変更しました。

さらに時間を戻すと最初は「萌え学」ではなく別のサイトを移植するつもりでしたが、モバゲーの人気ランキングを見ていると、美少女ゲームは競合が少ないわりに人気がある事に気付き、このジャンルで攻めようと決意しました。


そのアプリは「こいけん」と「ラブ恋」で、リリースが1末の老舗のコンテンツですが、今でもランキング10位以内不動のモバゲーアプリの筆頭コンテンツです。
特に「こいけん」が週刊ジャンプの裏表紙に広告を掲載しているのを見た時は、このマーケットのポテンシャルに身震いがしました。

というわけで、「萌え学」をモバゲーアプリをどのように送り出そうか企画を練りはじめるにあたり、上記2ゲームをやってみると、それはときメモに近い、週を消化していく形式の育成シミュレーションゲームの萌え学の仕組みとは大きく異なり、ボタン1つで女の子に話しかけて、それを延々と繰り返す仕組みで、正直「何だコレ?」というのが第一印象でした。

ですが、最終的には弊社も近い仕組みを取り入れました。シンプルさが、ユーザーにとって入り込みやすいのだろうという考えです。

企画を練るにあたり既存のコンテンツに不足していた部分は以下でした。

1:ゲームに終わり(エンディング)がある

高校を卒業してエンディングを迎えるゲームのため、継続性に問題がありました。シナリオの内容としてエンディングを迎えないように調整するとしても、シナリオ量も限界があるため、ゲームとしての終わりを迎えないように、如何に小出しにするか、それに付随してユーザーにシナリオ以外の部分で楽しませる「仕組み」が必要でした。

2:ユーザー間のコミュニケーションが無い

人気のあるモバゲーアプリの「公式サークル」を見ていると『○○募集』といったトピック名で、ユーザーメリットを前提としたコミュニケーション機能に関するやり取りが多く見られました。ユーザー数拡大には不可欠の機能と判断し、如何にこの仕組みを盛り込むかが課題でした。

3:ユーザー課金をどこで狙うか

本家の「萌え学」も相当課金力がありますが、あくまでユーザー対ゲームの一対一を前提とした仕組みで、さらに公式サイトとして有料ユーザーに対する課金を前提としており、それは無理ユーザーに対してそのまま流用できるものではありませんでした。

無料→有料の導線は今までの弊社のサービスでは経験が無いため、かなり試行錯誤しました。

4:限定などでユーザーに焦燥感、義務感を与える何か

例えば期間限定販売であったり、ユーザーを煽り立てるような仕組みが不足しており、これを如何にゲームに採り入れるか?ここは今も残るテーマです。


以上の内容をクリアする企画を考え、何度もリセットをかけブラッシュアップして今に至るわけですが、具体的内容はまだリリースしてないので省略します。


■課金パターンについて

最も暗中模索な部分が「課金」に関してで、これは今でも調整を繰り返していますが、正直「やってみないとわからない」という前提から、様々なパターンでの課金をまずは試す事にしました。

1:時短アイテム系
現状の企画では、ゲームの進行に時間がかかる仕組みになっており、それを省略するためのアイテム。パラメータを大幅に上昇させる攻略アイテムもこの中に含めます。

2:プレミアムコンテンツ系
待受、フラッシュ、限定シナリオなどを用意しました。これは美少女ゲーム特有の「マニア」の可能性を考えました。

3:コンプリート系
簡単に言うと図鑑のコンプには苦労か課金が必要。というような仕組みを取り入れました。


いずれのパターンが有用なのかは現段階では不明なので、リリース後に、比重を変えていこうと考えています。


■目標数値について
正直売上や会員数については不透明な部分が多く目標をたてにくいのが現状で、最低でも売上200-300万/月はいかないと辛いなとぼんやりと考える程度で、これがどれだけ妥当かもデータがなかなか得られない状態です。(ただし、外すと二束三文にしかならないという事は他社情報でありました…)

現状で指標にしやすいのは「公式サークル」の人数で、メガヒットアプリはリリース後一週間で10000人前後を達成しています。(ちなみにklab社の恋キャバは1日2000人のペースで増加していました)逆にあまり人気の無いアプリは初日でサークル会員数十人。一週間で数百人という増加をしています。(売上直結かは不明だが恐らく関連性は強いと判断)


いずれにせよ、如何にユーザーを増やすかが肝要で、加えてサーバーを落とさない事。この二点は課金への導線と同様に注力しています。


■ユーザーを増やす施策について
モバゲーの会員限定のサービスのため、自身でのプロモーションが難しく、ユーザーに如何に宣伝をしてもらうかがかなり重要だと考えています。

1:友達紹介インセンティブ
→動機付けと、ゲームバランスとの兼ね合いもあり、他社サービスを見ながら検討しています。

2:日記サービス
→ユーザーに日記を書いてもらう事も導線の1つと捉え、促進するしかけを設けました。

3:モバ友限定or優遇
→モバ友のコミュニケーションを促進する何か。現状模索中

4:ニュース機能
→モバ友のゲーム状況?現在模索中


その他以下の部分を重要視して企画を練りました

■話題性
他人に紹介したくなる、語りたくなるポイントを用意する。

■リピート
飽きない事、かつ長期に渡り楽しめるバランス感

■シンプルさ
他社のアプリではチュートリアルを挟むケースが多く、参考にしていますが、現状の多くのアプリが乱立する中複雑なゲームは理解されずに捨てられてしまうだろうと考え、できる限りシンプルな仕組みを心掛けました。

インパク
前述の通り、新着アプリの公式サークル増加率には大きく差があります。ファーストインプレッションを大事にし、ゲスト用トップページのインパクトは大切にしました。


現状の仕上がりは、まだまだ気になる点も残っていますが、かなりの成功期待感を持っています。さらに期待感をあげるため、近日のリリースにむけて、何度もユーザー視点にたって可能な限りのチェックを行いたいと思います。

次はインフラについて

モバゲーアプリはじめます

去年秋にmixi、今年はじめにモバゲー、間もなくgreeとソーシャルアプリを取り巻く環境が勢いよく整備されました。

zyngaをきっかけに、去年の夏ごろから『これからはソーシャルアプリの時代だ』と叫ばれて以来その勢いは増す一方です。

当初弊社ではソーシャルアプリをかなり悲観視していました。

その理由が下記

レッドオーシャンすぎる(注目度が高すぎて形骸化する)
■他社プラットホームに依存しすぎる
■将来性が感じにくい

秋ごろfindjobを見ると、ソーシャルアプリの求人が異常なほど多く、正直かなり悲観的に見ていました。


とはいえ注目度は高いので、パッケージベンダーとして参入支援を中心に構えるスタンスで考えていて、それは今も同じです。所が最近見方が変わりつつあります。

■例えばモバゲーでは、アプリが週単位でいくつもアプリがリリースされているが、「公式サークル」を見るに、ユーザーの増加率は大きく差がある。
→やればいいというわけでは無く、腰を据えてサービス提供をすれ必要があるため、実際の『勝ち組』は現段階で数える程度しかない。次々とサービスがリリースされるからといって、アプリが全て飽き去られるわけではない。

■インフラ代や開発費も馬鹿にならないため(むしろ最低月100万近くかかるであろうサーバー代を考えると気軽に参加できるビジネスとは言えない)基本無料で提供する事が一般化しているソーシャルアプリは、誰でも始めてられてだらだらと続けられるほど甘くない。

■某VCやホスティング会社によると月数千万、さらには億単位の売上をあげている会社もあるという話を聞き、予想をはるかに上回る規模に驚き無視できなくなった。


以上の事から、継続性は不明だがいわゆる「一攫千金」的な可能性を感じました。
加えて、コスト感の問題(高い)と企画の面(画一的だと辛いか?)でパッケージベンダーとして展開するのは、意外に難しいのかと思いましたが、現状モバゲーアプリを見ていると、「怪盗ロワイヤル」に始まる【時間で回復するメーター(表現が難しい)】を利用したステップ式のゲームは鉄板で目新しさがなくてもユーザーに受け入れられている事から、王道を一つ作れればパッケージでの展開もあり得ると感じています。


いずれにせよまずは弊社が当たるサービスを作れるかが重要で(その規模によって今後の弊社の事業展開が変わる)、近々リリース予定のモバゲーアプリとそれに付随したメモを残そうと思います。


ゲームのジャンルは「美少女ゲーム」弊社の稼ぎ頭の「萌え学オンライン(http://mgak.net/)」

今回ソーシャルアプリ用に完全に作り直しました。

■開発期間について
企画開始が4月末、企画が固まったのががGW明けの初日でした。そこから作り始めて、エンジニアは今回私が1人フルコミットで担当して(おかげで周りにかなり迷惑かけた)、現時点でほぼ完成しているため(ただしOAuthにつまづきそれ以前に3日かかった)開発にかかった時間はおよそ3週間。
コンテンツ部分はシナリオライター2人とデザイナー1人(ただし大部分は本家から流用)の体制で構築し、現状8割完成といった段階です。

企画の詳細については別途記載しますが、かなり充実した内容を短期間で作り込みました。

■サービスインについて
どうやら申請→審査が3営業日程度のようなので、月内にはリリースできそうです。

続けて企画について書きます